2017年6月5日月曜日

CDJを用いたserato HID & serato DVSの運用のお話

昨晩適当に書き連ねたCDJ850の記事が割りとビュー数が多かったので「そもそもHIDって何よ?」ってところから話をしていこうかなって思います。

seratoはかなり古くからある老舗PCDJソフトなのですが5~6年前までDVSをメインとした「serato scratch live」(現在開発終了)、PCDJコントローラーを使用するための「serato itch」があり、それぞれ独立していたのですが数年前にこの2つを統合して「serato」というソフトが生まれました。

ぶっちゃけた話をすると過去のブログ全盛期時代の解説記事は多いものの、ここ数年だとseratoを扱う記事そのものが全くなく、公式サイトの解説も基本しかわからないので自分が分かる範囲になってしまいますがseratoの記事を書いていこうと思います。




というわけで今回は現場でよく見るのではないでしょうか、Pioneer製DJM900NXSとCDJ2000NXSの組み合わせでのserato運用のお話です。




前述の通りseratoはDVS上がりのソフトなのでSLシリーズやミキサー直結のタンテDVSというのが大半の人の構成だと思います。
しかし、自分のように「特にスクラッチするわけでもないけど、seratoの持つ柔軟性が好き」とかいう理由で使ってる人もいるんじゃないでしょうか。




スクラッチプレイにはタンテがツールとして必須なのですが、我々のような4つ打ちMIX専門DJからしてみたら最悪CUEとPLAYと微調整用のJOGがあれば事足りるわけです。



そんなわけでCDJでもいいだろという考えになるのですが、ここで多くの人はseratoコントロールCDを用いたDVSをするかと思います。
そもそもDVSとはSL4やDJM900NXS等特殊なオーディオインターフェースにこれまた特殊な音(serato control signal)を読み込ませることでPCDJをするというもの。
つまりコントロールヴァイナルでなくても同じ音であればCDJでもPCDJでもラジカセでも動くんです。
その為普段のseratoとはちょっと挙動が違ったりするんですよね…



ですが少しだけ待ってください。seratoにはCDJをMIDIコンとして使用できるのです!
これは対応するCDJの背面にあるUSBポートとPCを接続することで、CDJの操作でseratoを動かすというもの。


DVS   ~特殊な音信号を使って制御~
CDJ(control CD) or タンテ(control vinyl)→RCA→対応インターフェース→USB-B→PC

HID   ~CDJのMIDI信号を使って制御~
CDJ(serato HID)→USB-B→対応インターフェース→USB-B→PC


って感じです。とてもイメージ湧きづらいと思うので、よくわからないっていう人は実際に触ってみるといいかもしれませんね。

とりあえず以下にHIDについて、そして機構が似てくるDVSとの比較をまとめておきます。


serato HIDについて

メリット
・現場の機材+PCのみでDJができる
・DJMとCDJのみでプレイ可能
・CDJ上で選曲できる

デメリット
・接続が複雑
・必要なUSBポート数が最低3つ
・機種によって課金(serato club kit)が必要
・seratoで使えても実際には使えない操作がある
・自宅で再現するのには高価




メリット


・現場の機材+PCのみでDJができる

これが一番のメリットですね。USBケーブルでPCと繋げばDJできます。

特に現場のDJブースってPCを置くスペースはあってもDJコントローラーを置くスペースはそうそうないじゃないですか。メッチャ邪魔だし、RCA挿してノイズ走るなんてこともありうるし…

あとPCDJだと、内部でDJをエミュレートしているので音が小さかったり、音質が悪かったりします。所謂エクスターナル(複数出力できるインターフェースを用いて音を出力しMIXはリアルミキサーで行うこと)の方が音周りの管理が楽なんですよ。


・DJMやCDJのみで操作可能

DJMやインターフェースと接続するだけでも上記のようにエクスターナル機構でDJできるのですが、このままだと操作はマウスでしか行えないです。とても不便ですよね。

そこで対応するCDJとPCを接続しましょう。CDJのPLAYやCUE、ピッチフェーダー、物によってはHOT CUEやLOOPもCDJで操作できるんです。

これ、ただのseratoサブコンになるっていうのもあるんですけど、冷静になって考えてみてください。数万円のPCDJコントローラーよりも一台10~20万円するCDJやDJMの方が質感が上なんですよ。
特に縦フェーダーやピッチフェーダー、PLAY、CUEボタンはとても使いやすいですね。


・CDJ上で選曲できる

これ、地味に使える機能なんですよ。

CDJ2000シリーズだと、CDJの画面上にseratoの曲情報がでて来るんですよね。つまり極論を言ってしまうとPC画面を一切見なくてもPCDJできるんです。

流石に波形は流れてこないのですが全体波形は見れます。マジで便利です。





デメリット


・接続が複雑

HID最大の欠点ですね。DJMは左上にUSBポートがあるのですが、CDJのUSB-Bポート(USBメモリ指すところじゃないですからね、要注意!)は背面にしかないのでとんでもなくセッティングしづらいんです。

serato以外でもCDJを使ったPCDJなんて使う人はほとんどいないので音出しの段階からUSB指しっぱにしておくことが多いですが、どっちにしても面倒なのに変わりないです。

・必要なUSBポート数が最低3つ

これもちょっと問題かもしれません。
2デッキ使うとしてもDJMに一本、CDJに二本USBケーブルが必要なんです。
MacbookだとUSBポートが2つしかついていないですし、そもそもフルで使うのはあんまし好きじゃないです。

USBハブを忘れたら演者の方に泣きつくしかなくなるのも困りものですよね。

前に行ったクラブではDJMとCDJのUSBを一本のUSBハブにまとめておいてくれたのでとても助かりましたね。


・機種によって課金(serato club kit)が必要

seratoは基本無料なソフトなのですが、機種によっては課金しないと使えないものがあります。最も代表的でこの記事を読んでいる方が最も使用するであろうDJM900NXSシリーズがまさにそれなんですよね。
serato club kitというおおよそ2万円する追加パックを導入しないと使用できないんですよ。

SLシリーズやDJM900SRT等中には課金しなくても使えるものもあるのですが、現場に常設してあるわけでもないので使うなら機材持ち込みか課金しかないです。




・seratoで使えても実際には使えない操作がある

CDJ2000NXS2からHOT CUEが8つに増えたのですが2000やNXSは3つしか使えないので、操作するにはマウスかサブコン導入しかないんですよね。

あとCDJ850とかになるとホットキューどころかシンクやクァンタイズもないのでそこそこ不便です。

自分はnanokontrol2に一通りの操作を割り当てているのでそちらでの対応、もしくはおとなしくマウスポチポチで対応しています。


・自宅で再現するのには高価

CDJやDJMってなると中古を含めてですけど一台10~20万円くらいするんですよ。
10万円単位の買い物なんてそうそうできないので、ちょっと試したいってなっても機会が全く無いんですよ。現場に行って音出し段階で試すしかないんですよね!

機材もっと安くならないかな!!!





と、ちょっとデメリットが多いですね。
全体的にまとめると「便利だけど複雑」って感じです。ほんとこれ。機材に疎い人はあんまし使わない方がいいかもしれないです。

そして、以下にCDJを用いたDVSとの比較をまとめておきます。



CDJを用いたDVSとの比較

メリット
・PLAY、CUEがしっかり使える
・ピッチ変更時に解析のラグが生じない
・DVSの不安定さがない
・CDJとの接続が途切れても音が止まらない

デメリット
・やや複雑な設定を行う必要がある
・対応していないCDJでは使えない



メリット


・PLAY、CUEがしっかり使える

これがDVSの面倒なところなんですよね。そもそもDVSは「タンテでPCDJを操作する」ということに主眼をおいたシステムなんです。

レコードやCDの再生位置と完全に動悸する「Absoluteモード」、再生している現在地から前後かのみを判断するRelativeモード」があります。AbloluteはPCDJでのHOT CUEが使えないというのもあってRelativeモードを用いることが多いのですが、これだと「再生位置から前か後ろかしか判断しない」のでCUEを使用することができないんですよ。

対してHIDはただのMIDIコンなのでHOT CUEもCUEも問題なく使用できます。


・ピッチ変更時に解析のラグが生じない

これはかなり重要だと思います。DVSはただの音信号を解析し、それを用いてDJしているんです。つまりピッチフェーダーを上げ下げしても「元の信号からいくつ早いか」を判断しているんですよね。

なので、ピッチフェーダーを使ってもすぐにはBPMが変わらず「BPM解析待ち」の時間が発生するんです。解析に伴って、表示されるBPMが揺れるということも起きるので目でピッチ合わせしている人には大変かもしれないです。


・DVSの不安定さがない

DVSは音信号を受け取って、DJ操作をしています。なのでコントロール音声に不具合が生じると通常再生さえ難しくなります。

CDJだと、マスターテンポ(キーロック)をしているとピッチ変更が不安定になったりしますね。音声信号の面倒を見なくてはいけないのはちょっと大変です。

レコードだと針の状態とかも影響してくるのですがCDJはそこまではないのであまり考えなくてもいいですけどね。


・CDJとの接続が途切れても音が止まらない

DVSは前述のとおり音信号を元に再生速度を決めているんです。つまりなんらかの原因でcontrol音声が入力されなくなったら音が止まってしまいます。

対してHIDではただのMIDI信号、通常時では信号がないのが当たり前なんです。
なので、CDJとのUSB接続はプレイ中に途切れても再生は継続されます。その場で接続し直してプレイ続行! なんてこともできますね。




デメリット


・やや複雑な設定を行う必要がある

DJMだったり、SLシリーズが設置してある環境でのDVSではそのままUSBを挿してコントロールヴァイナルなりCDを使えばプレイできますが、HIDだと背面に回ってUSBを指すところからしなければなりません。

ここでも接続工程の多さはネックになりますね。


・対応していないCDJでは使えない

これも重要な問題です。
例えば自分が回すバーの一つにCDJ800mk2が設置してある場所があるのですがこれだとHID非対応です。なのでCDを挿してDVSで回していたりします。

現場だと大抵が2000シリーズだと思うのですが、たまーにイレギュラーな機材が設置してあるところがあるのでserato公式サイトを一読した方がいいと思います。
こちらに「Official Accessories」とあればいけるはずです。




こんな感じで良い点もあれば悪い点もあります。
特にHIDは対応している機材でないと使用できないので現場の機材に左右されてしまう感はあります。

自分は

serato HID対応機材→serato HID+nanokontrol2(サブコン)
serato HID非対応機材→serato DVS+nanokontrol2(サブコン)
そもそもCDJがない→DVSインターフェース+nanokontrol2(サブコン)

という構成でやっています。そもそもHOT CUEがバンク切り替え無しで8つ使えるCDJはないのでナノコンはほぼほぼ必須になりますね。


PCDJはどうしてもレコードやCD、USBでのプレイより機材知識が必要となってくるので面倒ですが、
「トラブルを起こしたくない」
「快適にDJしたい」
と思うなら必然的に知識を貯めねばなりません。
少しずつでも十分なので、自分の使う(使いたい)機材は熟知しましょう!!!!


本番何か起こってからだと遅いですからね!!!